男性として生活するようになって心から困ることはトイレと風呂。
手術をしてもここは解決していないけど、幸いに困る頻度も少ない。
自由業だから自分でたいていコントロールが利くという恵まれた環境だからだ。
手術したばかりの頃は温泉や銭湯にいくのが念願というか夢だった。
胸は平らになっても男性器がないのにどうやって風呂に入るんだ?と気になる人もいるでしょう。
そういった外見上の悩みをサポートしてくれる道具に「エピテーゼ」というものがある。
エピテーゼは医療用具として認められていて、義手や義眼、乳がんなどで乳房を失ったひとがつけるのもエピテーゼだ。
特殊メイクにも使われる技術だけあってとても精巧。
お値段もわ~お!ってかんじで、ピンキリあるけど十数万円。
私がお風呂の夢を叶える時にお世話になったのは当然男性器のエピテーゼなんだけど、お見せできないのが残念なくらい精巧な作りだ。
特殊なシリコン製で形が作られていて、見た目や色合いはもちろん感触も人の皮膚、人の男性器そっくりである。
唯一違和感を感じるのは人体の一部 “だけ” で存在しているからで、おもむろに置いてあると狂気な殺人現場と変わりない(笑)
エピテーゼのつけはずしは特殊な接着剤を使ったり、種類によって簡単に付けられるものもある。
ただ、皮膚につけるモノは外れる可能性があるので、使うことによる安心感に矛盾して「外れたらどうしよう」問題が頭を支配する。
お風呂に入っていても気になるのは他人の視線と自分の股間(につけたモノがちゃんとあるか)になってしまうのだ(笑)
湯船でくつろいでいたら人の男性器だけがどんぶらこ浮いてきたら誰だってびっくりする。
だから、そうならないように常に股間への注意が向く。
100%リラックスできないそういうストレスがあっても、やっぱり大きなお風呂に入れることはとても幸せだった。
当時は休みの日があればお風呂屋さんに足を運んでたなぁ。
ところが、ここ数年は興味も薄れてほとんど行かなくなった。
と同時に、エピテーゼの出番もほとんどなくなった。
時々傷んでいないかとか点検のためにエピテーゼを引き出しから取り出すことはあったけど、
エピテーゼなしでのそこそこの入浴技術を身につけたのもあり、温泉に行くときも持たなくなり、手放してみようかなって。
エピテーゼの存在を確かめることで男性器がないのを意識してしまうし。
大金はたいて買ったっていう惜しさもあるけど、なんとなく手放した。
今までありがとう。
その後も特に変わりない暮らしをしているからきっとこれでよかったんだろう。
必要になったらまた買えばいい(笑)
その時はもっとレベルの高いエピテーゼが登場しているはずだから。
いつか使うかもしれないものはいつ使うかもわからない。必要になったらまた買えばいいよ。