タイで受けたSRS手術

  • 2019年10月1日
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私が手術を受けたのは2008年。

当時は日本では埼玉医科大学、または岡山医科大学(?)で性別再適合手術(SRS)が行われていたが、ちょうど執刀医が引退してしまって手術待ちの当事者がぶわっと増えた。

法律に沿った性同一性障害の治療順序をガイドラインといい、当時はそれがほぼ必須だった。でも一部はやはり違う道を進む人もいて「闇ルート」とも言った。

 

私はガイドラインに沿って進むつもりだったので、手術を理想のタイミングで受けられない絶望感のなかで、闇ルートのタイにシフトした。海外での手術を代わりに手配したりサポートするアテンド会社がちらほら現れた。


100万円くらいで手続き代行費、渡航費、宿泊費、入院手術費、サポート費がコミコミのパッケージプランが多かった。

ただ、アテンドを介して手術を受けるにも、海外で手術をうけるには医師から紹介状をもらう必要があった。(アテンド会社の中には偽の署名を自作の紹介状に印字してタイの病院に提出していたところもあったとか(笑))

 

タイに行くから英文の紹介状を書いてほしいと言っても、知らない医療機関に対してすんなり書いてくれる医師はいない。

経済的な理由と幸いにも良縁があり、私は自力で渡航する方法を選んだ。

タイで有名な病院はヤンヒー国際病院やガモンクリニック。今はもっと海外にも国内にも選択肢がある。

私がヤンヒー病院を選んだのは症例数の多さと、日本語通訳スタッフがいること。それ以外に情報を獲るのが難しかった。

 

自力渡航の準備

タイで手術を受けたい人は多かったけど、実現するには超える壁がある。

  1. 担当医師からの英文の紹介状
  2. 英文でのHIV検査の陰性証明書
  3. 病院やホテルの予約
  4. 言語
  5. アクシデント時の対応

今になるとどこからそんなエネルギーが湧いていたのかわからないけど、病院で医師と何度も交渉した。自作で英文の紹介状を作って執念で紹介状を書いてもらった。

ヤンヒー国際病院のホームページは今とは違い、日本語ページがなかったためコンタクトは英語が基本だった。

事前に千葉保健所(無料の検査、英文の証明書発行可だった)でHIV検査を受け、陰性しかないだろと思いながらお墨付きをもらう。

メールでやり取りをしながら証明書と紹介状をコンビニからFAXし、日取りを決めた。

逆算して出発日を決めて航空機のチケットをとる。航空機は往復だけど、術後の経過によって入院や帰国が先延ばしになる可能性もあることから、帰りの日程を変更可能にできるものにした。

ホテルを利用する場合は渡航日や入院期間、帰国日を参考の上予約しておき、当たり前だけどパスポートの準備はお早めに。戸籍変更後に海外に行く場合は性別が変わって再発行になるので10年用を作らないように。

私は運よくタイに友人がいたことでかなり救われた。中国の大学に留学中だった日本人の友人にタイ人のルームメイトがいて、留学を終えて本帰国する前にタイに滞在する時期と私の渡航のタイミングが重なったのだ。

友人は友達に色々話を聞いてくれて、最善の協力をしてくれたおかげで宿泊費もかからず、現地での不安はほぼゼロの状態で行くことができた。

SRS手術にかかった費用当時のレートは1バーツ約4円。日本円にして総額約60万円で、手術入院代は子宮卵巣摘出手術と乳腺摘出手術合わせて45万円前後だったような。

航空チケットに8万円、ほかに日常生活での買い出しやバンコクから国内線で移動した渡航費がかかった程度で、観光もしていないし食事や宿泊のほとんどをお世話になったためお金をほとんど使わなかった。

アテンド業者を利用する場合、10年以上経った今の料金体系は変わっていると思うけど、日本のあるアテンド会社がヤンヒー病院の日本語サイトを立ち上げて提携しているようです。(私とつながりはありません)

ヤンヒー病院日本語サイトへはこちら


手術前日、タイ到着朝早めのフライトで成田を発ち、約6時間のフライトでバンコクのスワンナプーム国際空港に到着。海外は高校の時に修学旅行で韓国に行ったのが初めて以来、一人で飛行機に乗るのは初だった。

スワンナプーム空港に着くと友人らと総出で歓迎してくださり、タイ人のお父さんの運転のもとバンコクの家へ。手術を控えていたがたくさんのごちそうをふるまってくれてお腹いっぱい食べた。ちなみに前夜21時以降は食事禁止。

翌朝起きて荷物をまとめてタクシーでヤンヒー病院へ。入院手続きと診察を済ませる。乳腺摘出と子宮卵巣摘出の担当医が違うので二人の医師からそれぞれ診察を受けるが、ヤンヒー病院所属の日本語通訳の人がついてきてくれるので安心。

この病院で驚いたのは、カルテを運ぶ女性スタッフはインラインスケートで病院内を素早く移動していて、その技術に見とれてしまう(笑)

 

診察を終えると入院する部屋に案内され、二人がかりでバイタルの確認と手術の準備で剃毛される。友人が同じ部屋にいるのも構わずカーテン越しにじょりじょりとやられる。

運の悪いことに前日あれだけ飲み食いしたのに翌朝の便通がなかった。手術前は浣腸が定番だけど…ない(笑)

不安がぬぐえないまま鎮静剤を飲んで点滴を打たれ手術室に運ばれた。結果的には大丈夫だったみたいだけど。

オペ室の入り口まで友人たちが送りに来てくれて、ドラマみたい(笑)手術台上がってマスクを当ててから記憶はない。

私が受けた手術の内容

・乳腺摘出手術

女性的な乳房のうち、ふくらみに関わる乳腺とその周囲の組織を摘出する手術のこと。

私のように小さめな人は乳輪に沿って切開し、中身をほじくりだして閉じるだけで傷跡が目立たないが、大きい乳房になると乳輪から離れた組織も切開したり、乳腺を摘出して余ってしまった皮膚を切り取る必要があったりと傷跡が残りやすい。

血管が細いエリアなので、喫煙などによって血流が悪いと術後に乳頭が壊死したり術後感染にかかりやすい。

・子宮卵巣摘出手術

女性としての生殖機能をなくす手術である。

下腹部を10センチほど切開して摘出する方法が主流で私もその術式だったが、最近では内視鏡を用いて膣から摘出する術式も可能になっている(費用は高くなる)。

子宮卵巣を切除したのち、いずれ陰茎形成まで行いたい人は内視鏡で受けるとその先の陰茎形成ができない可能性があるのでよく調べたほうがいい。

見た目や体への負担は内視鏡のほうが少なく、切開した私の下腹部には横真一文字の傷跡が残っている。医療に詳しい人なら男性がやる手術でないことが分かってしまうだろう。

タイではこの2つの手術を同時にできるパッケージになっていて、その方が費用も少々安く済む。ただし術後の痛みはきついかもしれない。酒飲みは麻酔が効きにくい。


意識がはっきりして、女性の身体が終わったんだという安堵が入り混じった不思議な感覚だった。痛みはだんだんはっきりしてくる感じ。いつものようには動けない。

ベッドサイドにあるオプションで付けたモルヒネを活用しながらしのいだ。すごく尿意を感じるのだけど、カテーテルが入っているせいだ。

術後一番つらかったのは、許可が下りるまで水を口にできなかったこと。

術後の入院生活ヤンヒー病院は国際病棟があって私のように各国から手術を受けに来た人が広い個室に滞在している。入院期間は約1週間だったけど、あまりに快適すぎて日本の病院には入院したくなくなる(笑)

色々な意味で自由で容赦がない。腹部を切っているのでお腹に力が入ると猛烈に痛い。それなのに食事は辛いものとが平気で出てくる。

カテーテルは数日で外され、動け動けと言われる。乳腺除去した後の血種を集めるカテーテルはまだ胸部に刺さったままなので、身体は配線だらけに変わりはないので動きにくい。

これが同時手術の大変なところかもしれない。この頃から腸が移動して刺すような痛みに襲われる。除去した子宮や卵巣のスペースに腸が入り込んで便の流れが変わる感じ。

食べたければマックやケンタッキーなどのデリバリーも利用できる。

部屋にテレビがついていて日本のNHKは見られる。シャワーブース、洗面台、冷蔵庫、ソファーありのホテル住まいをしている気分になれる。

 

術後の色々

肘部管症候群になりました。

ベッドで長時間圧迫されてたのが原因。通訳を介してドクターに伝えたけど、手術とは関係がないからわからないと言われた。

アフターフォローは日本が手厚すぎるくらいだけど、海外での手術のリスクはこういったことかもしれない。

帰国してしびれが激痛に変わったので整形外科に行き「肘部管症候群」という診断を予想通りに受けてきた(笑)

 

ベッドでの長時間、肘の神経が圧迫されて神経が炎症を起こしてしまう状態で、元の状態に戻すまでは2年くらいかかったが、この症状は回復しただけマシなのだ。

退院時にすべての精算をバーツで支払う。その時に領収書と手術証明書を受け取り、今後の手続き(ガイドラインの進行、戸籍の性別変更の裁判の資料)に使う。

今はクレジットカードが使える?私は日本にいる時点で銀行で大量のバーツに変え、手に持ってドキドキしながら過ごしていました(笑)

 

退院後はバンコクからタイ東北部にある友人の自宅に滞在するため国内線と車で移動。まだ身軽じゃなかったので観光というよりその土地での暮らしを楽しむように過ごした。3週間であっという間の帰国。

胸や腹の傷で力が入りにくいので帰りの荷物は重くならないように。手術後から胸部を血腫の予防でしばらくの期間圧迫するサポーターを装着しているため、締め付けとフライト中の窮屈感でリラックスが難しい。

私が行った1月末から2月の時期は日本は真冬、タイは35度前後と気温差が激しい。寒いほうが苦手な私にはちょうどいい時期だったと思う。

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